30年のあゆみ 災害の記録 本文へジャンプ


ゲリラ豪雨対応(H21.8.8)





 1 経過

・平成21年8月8日(土)夕方6時過ぎ、諏訪地方を中心に1時間雨量100_を超える降雨があり、ダム水位は翌9日午前3時に848.5mを記録。降雨前の水位は846.8m。短時間の内に1.7mも水位が上昇した。
  (参考:国土交通省 水分水質データベースより 平成21年8月8日 後山観測所降雨量)

・箕輪ダムから取水している箕輪浄水場の原水濁度は、最大940度まで上昇した。

・企業団では、濁度(基準値2度以下)を抑えるため、凝集剤(以下「PAC」)と、次亜塩素酸ナトリウムを、それぞれ通常の4倍から6倍程度の量を投入。通常は投入しない苛性ソーダも投入してフロックの形成に努めた。
・浄水処理の結果、浄水濁度は0.002度。浄水後の水質については、特に問題はなく、断水することなく送水していた。
・10日頃から、各受水団体に住民から泥臭に関する苦情や問い合わせが相次いで寄せられた。その件数は、10日7件、11日123件、12日40件、13日12件、14日2件と、5日間で延べ184件にのぼった。

・原水濁度は、1か月を経過した9月10日には100度を下回り、9月下旬には50度を下回った。10月6日には定期的なダム取水ゲートの点検作業があり、また、同月9日には台風18号の影響を受け、再び50度を上回ったが、その後は少しずつ逓減し、翌年1月20日には通常の原水濁度である2.4度まで回復した。

【当時の関連写真


 2 泥臭発生原因について

・8月10日に臭気に関する苦情が寄せられたことから、臭気の指標であるジェオスミン及び2-メチルイソボルネオール(以 下、2-MIB)について原水及び浄水にて測定を行った。その結果、原水では、ジェオスミン、2-MIBがそれぞれ基準値内 数値ではあるが検出され、ジェオスミンにあっては、浄水でも基準値の3分の1程度の数値が観測された。

・これら臭気物質の原因生物とされるのは、植物プランクトンである藍藻類と土中に含まれる放線菌である。植物プランクトンは通年観測されているが、通常は臭味が感じられることはない。従って、今回の臭気原因については、後者の土中の放線菌が原因ではないかと考えられる。

・当日、短時間で急激にダムの水位が上昇したため、ダムの中間層と底に存在する滞留部分にも水流が発生し、ダム湖全体が均一の水質となり、水中に滞留していた物質が全体に拡散したこと。また、短時間に降ったゲリラ豪雨により集水域の地表の土砂を巻き込み、その中の放線菌が原水へ流れ込んだためではないかと考えている。

3 課題

 (1)大雨、洪水警報に対する警戒態勢の強化

・8月8日午後、諏訪地方、上伊那地方に大雨、洪水警報、及び雷注意報が発令されていたが、上伊那地方は短時間の降雨と雷のみであったため、通常の委託業者による監視体制のみで、災害を予見した十分な警戒態勢がとられていなかった。9日0時、夜間勤務者から急激な濁度上昇現象について担当職員に連絡があったが、その時点からの対応となったため、職員参集時間の間(約1時間)、対応の遅れが生じた。

・上伊那地域のみならず、諏訪地域の気象状況についても留意して、その後雨量の見込みに応じた警戒態勢を徹底する必要がある。

 (2)施設整備の必要

 ・箕輪浄水場の設計では、当時、沢川の濁度の計測(8度)を基準に、その4倍の原水濁度である32度を想定して施されている。しかし、こうした局地的豪雨は、今後もあり得ることから、可能な施設対応を講じていく必要がある。


   ・ダム取水側に濁度計を備え、その状況をテレメータで監視する。

   ・共用となっている前次亜注入ポンプと苛性ソーダ注入ポンプを独立させる。

   ・活性炭注入装置を設置する。

◇参考:原水の高濁度による異臭味対策について(平成22年10月)
   (長野県上伊那広域水道用水企業団 レポート)